デザイン以上にシャツの見た目や雰囲気、着心地や用途までを決定づける生地。「シャツ選びは生地選び」と言っても過言ではないほど、1着のシャツにおける重要な要素です。
一目でわかる色や柄はもちろん、素材や織り柄、機能性(加工)、糸番手など判断基準は多岐に渡ります。この記事では、ほんの一例ですが、生地選びのヒントをご紹介いたします。ご自身が重視するポイントを絞って、条件に合う生地をお探しください。
清潔感や信頼感が求められるビジネスシーンでは、無地の白やサックスの生地が定番です。
無地と一口に言っても、織り柄によって様々な表情が生まれます。素材によっても変化するため一概には言えませんが、一般的にはブロード、ツイル、ヘリンボーン、ドビーといった織り柄が程よい光沢を持ち、ビジネスシーンにふさわしいとされています。
仕事着として頻繁に着用するなら、形態安定(防シワ)性のある生地がおすすめです。
ご自宅の洗濯機で洗濯してアイロンは簡単にかけるだけ、もしくは完全なノンアイロンなので、お手入れが簡単。着用時にもシワを気にせず動ける、日常使いにぴったりな加工です。
ストレッチ性(伸縮性)のある生地を選べば、動きやすく一日中着用しても疲れにくいシャツに。コットンに加工を施してストレッチ性を持たせたものや、元々ストレッチ性の高いスパンデックスなどの素材を用いたものなどがあります。
毎日のように着用される方には、抜群のストレッチ性と形態安定性を併せ持つニット生地もおすすめです。布帛に近い見た目で、ドレッシーに着こなせるニット生地をご用意しています。
柄の入った生地は、マンネリ化しがちなコーディネートの幅を広げます。
まずはストライプやチェックなど、合わせやすい定番の柄を取り入れるのがおすすめ。ストライプシャツはスマートな印象を、チェックシャツは柔らかい印象を与えやすいです。
クレリックとも相性が良く、シャツだけでも簡単におしゃれを楽しむことができます。
超高番手である100番手以上の糸を使用した生地は、高級シャツの代名詞です。素材の魅力を最大限に引き出す風合いの美しさはもちろん、その滑らかな肌触りの心地良さは、袖を通した瞬間にお分かりいただけるはずです。
気合いを入れたいときの勝負服として、ぜひ1着お持ちください。
シャツ生地の聖地イタリアや、上質なコットンを生み出すスイスをはじめとして、主にヨーロッパから輸入されるインポート生地からは、国産の生地とはまた異なる美学が感じられます。美しく輝く白や華やかな柄など、目を惹くインポート生地のシャツを、一張羅としてお持ちの方も多くいらっしゃいます。
ドレスシャツ・ビジネスシャツではもちろん、近年ではビッグシルエットで仕立てたカジュアルウェアとしても人気があります。
落ち着いた大人の休日には、やはりオックスフォードシャツが似合います。60番手以下の低番手の糸を使用した、肉厚でシンプルな生地が理想的。白やサックスのほか、ピンクや黄色など明るい色でも着こなしやすい懐の深さがあります。暗めの色がお好みの方には、デニム生地などもおすすめです。
夏の衣服には欠かせない素材であるリネン。さらりとした肌触りと抜群の通気性で快適に、そして明るい色は見た目にも爽やかに着用できます。
イタリアンカラーやワンピースカラーなど、胸元を開けて着用する衿型との相性が抜群です。袖をロールアップして、さらに色気のある着こなしに。
正装のマナーとして、冠婚葬祭などの場では白のブロード生地が無難なチョイス。特に葬儀の場では、それ以外の生地は避けましょう。衿型は「レギュラー」、前立ては「裏前立て」が一般的です。
タキシードやモーニングなどのフォーマルな装いには、衿型「ウィング」にボウタイ(蝶ネクタイ)を締めるのが正しい着こなしです。
ワタ(綿花)の繊維のこと。肌触り、吸水性、耐久性、扱いやすさなど、あらゆる点で優れているため世界中で衣類に用いられる定番の素材です。季節を問わず着用できます。
様々なランクがあり、中でも繊維長35mm以上の繊維のみを使用した超長綿は非常に肌触りが良く、高級素材として扱われます。世界三大綿として名高いスーピマ綿(アメリカ)、ギザ綿(エジプト)、新疆綿(ウイグル自治区)も超長綿の一つです。
セルロースから構成される植物繊維の総称です。特定の植物を指すわけではなく、「麻」と一口に言ってもその種類や製法は多岐にわたります。
通気性と保湿性に優れており、夏は風を通して涼しく、冬は体温を閉じ込めて暖かく着用できます。長く使うほど肌に馴染むような柔らかさも魅力です。
羊の毛を原料として作られる動物繊維のこと。厳密にはカシミヤやアルパカなど他の動物の毛も含まれます。
縮れた繊維同士が絡み合い、湿度によって遮熱と放熱を変化させる万能素材。冬に限らず様々な季節向けの衣類に使われます。綿(コットン)やポリエステルと混紡することで、肌触りや耐久性を補うことが多いです。
メリノやコリデールなど品種によっても特徴や癖があり、スーツなどの重衣料になるとその選択が非常に重要になってきます。
高機能な石油系の合成繊維の一種で、軽量性、速乾性、形態安定性に優れています。洗濯による縮みもなく、様々な素材との組み合わせが可能なため、シャツに限らず洋服作りには欠かせない素材となりつつあります。
アイロンの際に誤って意図しないシワをつけてしまうとなかなか取れなかったり、高温過ぎてテカリが出てしまったり、取り扱いに注意が必要なシーンもあります。
ポリウレタンを主成分とした合成繊維。その極めて高い伸縮性が特徴で、混紡率の低い状態でも発揮されるため様々な素材と組み合わされます。他にも強度、吸水性、耐老化性、染色性などに優れた特殊な素材です。
柄や凹凸のないシンプルな織り(平織り)で、光沢は淡く控えめ。ビジネスパーソンにとっての定番です。滑らかな着用感が魅力ですが、その分シワが寄りやすいこともあります。高密度で織られた光沢の強いものはフォーマルな装いにも。
タテ糸とヨコ糸それぞれ2本以上の糸を引き揃えて織る平織りのこと。隙間が多く生まれることで、通気性が良く、軽く柔らかい生地に仕上がります。元々はカジュアルウェア向けでしたが、現在ではビジネスシャツやフォーマルシャツにも使われるほど多様な種類が生まれています。
「斜文線(綾目)」と呼ばれる斜線状の模様を持つ綾織りのこと。この模様に光が当たることで、表面に適度な光沢が生まれます。柔らかくお手入れもしやすい傾向にあるため、カジュアルからフォーマルまで幅広いシーンに使用できます。
「フレンチ綾」とも呼ばれる綾織りの一種で、一般的なツイルよりも幅広で立体的な畝状模様が特徴です。それによって光沢が強まり高級感の漂う、柔らかな肌触りながらシワの寄りにくい生地に仕上がります。
綾織りの一種で、逆向きの斜線を交互に組み合わせたV字型の模様が特徴。シーンを限定せず着用できることから非常に高い人気を誇る生地です。適度な厚みがあり、シワが付きにくく取れやすいので、お手入れは比較的簡単な傾向にあります。
糸の本数や太さ、織り方などを変化させることで、様々な模様を表現できる「変わり織り」の一種。表面の光沢が素材を際立たせ、高級感のある生地に仕上がります。フォーマルなシーンでの着用にも適しています。
やや太めの綿糸を用いた綾織りのこと。インディゴなどで染色したタテ糸と、白いままのヨコ糸を組み合わせることで、特徴的な見た目に仕上がります。水洗いによる色落ちがナチュラルな色合いを生み、味のある魅力を引き出します。
タテ糸に色糸、ヨコ糸に白糸を用いた平織りのこと。表面に霜降り状に現れる白糸の、独特の温かみが魅力です。色落ちすることが少なくご家庭での洗濯が可能で、扱いやすいのも特徴の一つです。
タテ糸とヨコ糸が交差した織物のことを布帛(ふはく)というのに対して、ニットは結び目を作るように糸のループを連続させた編み物のこと。抜群の伸縮性に加えて通気性や形態安定性など、高い機能性によって着用もお手入れも楽で快適に。
ウールの繊維を起毛させた毛織物のこと。ふんわり柔らかな風合いと暖かさが特徴です。現代では綿(コットン)を原料とするコットンフランネルも一般的で、ウールに比べて軽い着用感はワイシャツにも適しています。
「しじら織り」とも呼ばれる、表面に縞状の凹凸を出した平織りのこと。肌にベタつかないサラリとした清涼感と、シワになりにくいのが魅力です。クリーニングで高圧プレスをかけると凹凸が薄くなることがあるため、ご家庭での洗濯を推奨しています。
平織り、綾織りと並ぶ織物の三原組織の一つである「朱子織り」のこと。糸同士の交差する点が少なく、非常に滑らかで光沢の強い、高級感あふれる生地に仕上がります。その反面、耐久性は低い傾向にあります。
その名の通り、タテ糸を「絡み」合わせた間にヨコ糸を通して織られた織物のこと。一見すると編物のような立体的で透け感のある見た目に違わず、通気性や速乾性、さらには形態安定性の高さが魅力です。
番手とは、糸の太さを表す単位です。番手が高いほど糸は細く、光沢や風合いが豊かになります。
カジュアルシャツや一般的なドレスシャツに使用されます。
→~70番手の生地を探す
一般に高番手とされる基準です。高級ドレスシャツに使用されます。
→80番手の生地を探す
日常遣いに適した範囲では、最も高番手と言えます。肌触りに明らかな違いが見られます。
→100番手の生地を探す
特別な日のシャツとしてお持ちになるのにおすすめな超高番手です。
→120番手の生地を探す
超高級シャツに使用されます。シワになりやすくお手入れも難しいため、一般的な着用にはあまり向いていません。
→140番手~の生地を探す
通気性に優れ、夏の時期に最適な生地。透けやすいですが、色が濃くなるほど透ける可能性は低くなります。厚手の生地よりもシワになりやすい傾向があります。
オールシーズン着用でき、絶妙な柔らかさがビジネスシャツに最適です。少しシワになりますが、形態安定加工もあるので安心です。
オールシーズンに適しています。カジュアルな生地や形態安定加工の生地も多く、バリエーションに富んでいます。白でも少し透けて見える程度です。
秋口など涼しい季節のカジュアルシャツに最適です。しっかりとした厚みがあるので、シワになりにくい傾向があります。
厚みがあり暖かいため、寒い季節のカジュアルシャツに最適です。耐久性や防シワ性にも優れています。
繊維の質感がよくわかり、カジュアルな印象を与えます。
代表例:デニム、シャンブレー、シアサッカー、フランネル
程よくドレッシーで、ビジネスカジュアルにもぴったりです。
代表例:オックスフォード、ニット
主張が少なく着回しやすい、一般的なドレスシャツの水準です。
かなりドレッシーな素材感で、スーツによく似合います。
代表例:ブロード、ツイル、ヘリンボーン、ドビー
艶やかで高級感があり、フォーマルなシーンで活躍します。
代表例:カルゼ、サテン
主な生地のブランド(メーカー)を紹介しています。
1919年、イタリアはノヴァーラ郊外の歴史あるロマンティノ村で、高級衣料向けシルク織物の製造業者として創業しました。第二次世界大戦後にはメンズシャツ向けの綿生地へと軸足を移し、シルクが斜陽産業となった後も業界での高い地位を維持しています。
現在でもすべての工程を自社工場内で行い管理することで、正真正銘のイタリア製であることを保証しています。ブランドの特徴は独特なストライプ柄で、しなやかな着心地と華やかな光沢、大胆でスタイリッシュな色柄がイタリアらしい魅力を溢れさせます。
1925年イタリア・カッチーヴィオのガレージにて、織物の機械工学を学んだジュゼッペ・カンクリーニにより創業。当初は女性用下着メーカーでしたが、シルク糸の紡績も手がけていました。第二次世界大戦下にはパラシュートの生産で成功を収め、戦後1960年に生産を開始したシャツ用シルク織物のデンマーク、フランス、ドイツへの輸出によって成長を続けました。
1975年頃にはコットン製シャツ生地の生産を開始し、やはりヨーロッパ諸国への輸出によってその評価を高めました。世界的メーカーとなった今でも投資と研究に力を入れているように、品質への努力とこだわりは衰えることなく、ジャンルを問わず様々なハイブランドからも厚い信頼を得ています。
シャツ生地の最高峰との呼び声も高い老舗メーカー。産業革命真っ只中の1796年、トーマス・メイソンによってイングランドのランカシャーにて創業し、貴族や上流階級のためのシャツ用の綿織物生産でその名を揚げました。常に革新的でありながら洗練されたスタイルは時代を超越した英国的エレガンスを象徴し、英国王室も御用達の綿織物を作り続けてきました。
1991年からはヨーロッパ最大のシャツ生地メーカーであるALBINIグループの一員として、更なる進化を遂げるべく研究を続けています。変化を厭わず、クラシックとトレンドの両輪で走り続ける、まさに伝統と革新の両方を体現する名門です。
言わずと知れた世界最大の生地メーカーグループ。1876年、イタリア北部に位置するベルガモ県アルビーノのデゼンツァーノ・アル・セーリオで設立されて以来、代々受け継がれる盤石な経営体制のもと確固たる地位を築いてきました。
1992年の英国名門ブランド(Thomas Mason, David & John Anderson)買収を皮切りに垂直統合と規模拡大を加速させ、原料の生産から製品の物流までを一手に担う巨大コングロマリットとして成長を続けています。設備や技術開発はもちろんのこと、ITなど様々な分野への投資を厭わない姿勢が、世界のトップ企業として先端を走り続ける所以です。
創業当時からのオリジナルブランド「Albini 1876」は、現代的に解釈された伝統のイタリアンテイスト、卓越した技術力と創造性、希少で上質な綿や麻といった素材、そして絶え間ない研究開発によって、他とは一線を画す芸術としてのシャツ生地を生み出しています。
1958年にメロ一族によって設立された、ポルトガル最大かつ最先端の生地メーカー。初代国王誕生の地として知られる古都ギマランエスで、豊かな自然とドウロ川の水質に恵まれた紡績工場として創業し、その後綿織物の生産に乗り出しました。1974年には染色と仕上げの事業分野を活発化させ、垂直統合を推進させました。
90年代初頭にはグループの下に12もの企業を設立し、現在も紡績から染色、織り、仕上げまでを自社の広大な敷地内で一貫生産しています。紡績業というルーツならではの高番手の糸を活かした、細やかで美しい先染めの綿生地が特徴です。
日本が世界に誇るデニムメーカー。岡山県は井原市、水源に恵まれた国内有数のデニム産地で1974年に創業しました。
染色工場、織布工場、整理加工工場という設備をすべて自社で保有し一貫生産する、数少ないデニムメーカーのひとつです。デニムのルーツであるヨーロッパ、デニム文化を形成したアメリカでも最高峰のデニムとして崇敬され、世界的なハイブランドにも採用され続けています。
1943年、兵庫県西脇市を中心に広がる日本屈指の織物産地、北播磨地域で事業を開始しました。糸染め、織り、加工、すべての工程を自社一貫で手掛けています。
豊かな自然と美しい軟水に恵まれ、200年以上の歴史の中で培われた技術と伝統によって、品質の高さで日本から世界に名を轟かせる播州織のトップメーカーとして活躍しています。
綿糸を染めてから生地を織り上げる「先染め」と呼ばれる手法によって生まれる豊かな色合いが特徴の一つです。
シャツに限らず、繊維製品は洗濯・クリーニングを繰り返すことによって縮みが発生します。
使用による通常の消耗ですので基本的に気にかけていただく必要はございませんが、気になさる方は指定するサイズに以下の通り余裕を持ってご注文いただければ、収縮後もご着用いただきやすいかと思います。
衿/カフス | 0.5cm~1cm程度 |
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裄丈 | 1cm~2cm程度 |
また、素材別での生地の収縮率は以下の通りです。あくまで目安ですので、各素材のすべての生地に当てはまるわけではありません。
綿100% | 約3% |
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綿麻混紡 | 約5% |
ポリエステル | 約1% |
当サイトではシャツ生地の防シワ加工について、イージーケア、形態安定、超形態安定、ノンアイロンという4つの呼称を使用しています。ここでは、それぞれの違いを解説します。
4つの呼称はそれぞれ、洗濯後のシワを1~5級で評価するW&W性(ウォッシュ&ウェア性)というJIS規格の指標に基づいて定められています。W&W性が高いほど形態安定性も高く、シワや型崩れに強い生地と言えます。
ノンアイロン
W&W性4.0級程度。ほとんどシワにならず(カット率90%)アイロンがけは必要ありません。
超形態安定
W&W性3.5級程度。一般的にも「超形態安定」と呼称される高水準の防シワ性です。
形態安定
W&W性3.2級程度。洗濯後もシワは少なく(カット率50%)お手入れが簡単です。
イージーケア
W&W性2.5級程度。形態安定加工には劣り洗濯後のシワはあるものの、アイロンがけは簡単です。高級な素材などの風合いを保ちたい場合に採用されます。
また、加工が施されていなくても、素材や生地の厚さ、織りの種類などでも防シワ性は変化します。
実際には一つの生地の中で様々な要因が関係し合っているため一概には言えませんが、一般に見られやすい傾向を表にまとめたものが以下になります。
防シワ性 | 強い | 弱い |
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素材 | ウール、化学繊維 | コットン、リネン |
厚さ | 厚い(糸密度が高い) | 薄い(糸密度が低い) |
織り | ドビー、ツイル、オックスフォード | ブロード |
シャツ(生地)を選ぶ際には、見た目や手触りに加えて防シワ性などの機能性もひとつの判断材料になります。
ご自身のライフスタイルに合ったものをお選びください。